「この会食、業務として扱っていいのかな?」経理や労務の現場では、飲食を伴う会合の業務性に悩む場面が少なくありません。税務処理や労災認定、労働時間の判断にも関わるため、曖昧なままにしておくと後々トラブルになることもあります。
従業員からみても飲食を伴う会合が残業と扱われないという場合、食事がでるからとはいえ拘束されているのだから労働時間になるのでは、と考える方もいるかと思います。
今回は、その業務性の判断ポイントとについて考えてみます。
業務性の判断ポイント
まず、飲食を伴う会合について、「業務性が認められるかどうか」を判断する際には、いくつかの要素を総合的に評価することになりますので、その代表的な要素を考えてみます。
目的の明確性
商談、採用活動、情報共有などの業務目的が明確になっているかどうかという点です。
〇業務上の目的がある場合 → 業務との関連性が高くなる
×親睦を深めるのみという場合 → 業務との関連性は低くなる

では取引先と親睦を深めるという場合はどうなのかな?

親睦のみという場合は業務性は認められにくくなりますが、業務指示により参加が強制されていれば業務性ありと判断される可能性はありますよね。
開催の経緯
上司や会社からの指示により開催されたものかどうかという点です。
〇指示により開催(黙示の指示も含む)する場合 → 業務との関連性が高くなる
×指示によらず開催する場合 → 業務との関連性は低くなる

会社の行事のようなものは業務との関連性が高くなるけど、社員同士で企画したようなものは低くなるということだね。
自由参加かどうか
自由参加か、参加が強制されているかどうかという点です。
〇強制参加であったり、参加しなければ評価に影響するような場合 → 業務との関連性が高くなる
×自由参加であり、欠席の場合も不利益がない場合 → 業務との関連性は低くなる

食事がでるからといって強制参加であれば業務とみなしてほしいよね。

参加が事実上強制されているような場合は使用者の指揮監督下に置かれたものと評価される可能性が高いたので、業務ととみなされる可能性も高いです。
会食中に役割があるかどうか
司会、受付、進行など明確な職務を担っているかどうかという点です。
〇会食において役割を担っている場合 → 業務との関連性が高くなる
×役割はなく親睦を深めるのみの場合 → 業務との関連性は低くなる

会食中の役割が終わり、その後は親睦を深めるだけならどうなの?

役割があるということは参加が強制されているということになりますね。役割を終えてからの参加は事由という場合は役割を終えるまでは業務とみなされる可能性は高いです。
どうのように判断するのか?
上であげたポイントの他に参加者には取引先の人も含むのかや参加費は会社負担かといった要素も判断の要素になる場合もあります。これらに一つでも該当すれば業務に該当するということではなく、複数の要素を総合して判断されることになります。
ただし例外的に強制性や職務遂行が明確な場合は単独で業務性が認定されることもあります。特に「業務命令による参加」、「実際に運営に関与している」などは、他の条件が揃わなくても業務性があると判断されやすくなります。
よくある事例と業務性の有無
上のポイントから具体的な事例をどのように判断するのか考えてみます。
商談後の会食や接待
取引先との商談後に行われる会食や接待の場合です。
- 打ち合わせが主な目的となっている
- 業務上で必要となる話をする
- 準備や片付け、その他の雑務を行う
- 会社から指示を受けて参加している
- 親睦を深めることが主な目的となっている
- 途中退席しても賃金カットなど処罰の対象とならない
- 会食中は基本的に自由であり特に役割はない
- 自由参加で欠席により不利益を被ることはない

これだと普通の接待は業務との関連性は薄そうだね。

仕事の話をしないただの接待であれば親睦を深めるのみなので業務との関連性は薄いでしょうね。
社内の忘年会や送別会
会社の従業員のみで開催する忘年会や送別会です。
- 会社の指示により開催されている
- 準備や片付け、その他の雑務を行う
- 参加が強制されている、または欠席することで不利益がある
- 従業員が任意で開催している
- 会食中は基本的に自由であり特に役割はない
- 自由参加で欠席により不利益を被ることはない

役割があったり参加が強制されていたりすれば業務に該当しそうだね。

自由参加の忘年会でも幹事を務めるなどの場合、その人は必然的に参加が強制されますし司会進行など役割もあるでしょうから業務に該当する可能性は高いですね。
内定者懇談会
内定をだした学生と懇談会をするような場合です。
内定者懇談会は採用活動の一環として会社の指示のもとで行われるため業務に該当

基本的に業務に該当しますが例外として、例えば複数の担当がいて、その中で特に役割もなく参加も強制されていない人がいた場合、その人は参加しても業務に該当する可能性は低いですね。

その人は内定者とただ親睦を深めるためだけの自由参加ということになるから業務には該当しなさそうだね。
懇談会の途中まで役割がある場合
例えば新年懇談会などで司会進行を務め、途中からは業務からは解放されて参加者と親睦を深めるだけというような場合です。
少なくとも役割をおえて解放されるまでは業務に該当

役割を終えても最後まで残っていなければいけないというような場合であれば懇談会の終了までが業務に該当する可能性は高いですね。逆に、役割終了後に自由に退席できる場合は、そこから先は業務とはみなされません。

最後に片付けがあって残っていないといけないという場合は業務に該当しそうだね。
おわりに
やはりもっとも重視されるのは、自由参加か強制参加か、業務上の目的があるか、の2点だと思います。
企業からすると「食事をしてるだけで生産性がないから業務とはみなせない」と考えるかもしれませんが、従業員からすると「強制だから仕方なく参加しているからこれは業務だよね」と考えると思います。
実際、飲食を伴う会合で賃金を支払っている企業は少ない印象です。企業の飲み会でなんでもかんでも残業だというのはおかしいですが、業務上で必要な会であれば、賃金を支払うように検討する方が時代の流れにあっているような気がしています。
そのためには、「どういう場合であれば業務に該当するか」を企業として定めておく必要があります。労使で相談のうえ、社内ルールを決めておくことが、トラブルを防止し双方が良い関係で進んでいくためには大切なことではないかと思います。

