育児・介護休業法の「周知・意向確認」について ~忘れがちな措置のタイミングを確認~

労務関係

2025年(令和7年)に育児・介護休業法が改正され、企業はその制度の周知や意向確認を行う必要が出てきました。就業規則は直したけれど、周知や意向確認までは手が回っていない…という声もよく耳にします。これらは実施のタイミングが決まっているため、確実に行うには日々のルーティーンに組み込むことが大切です。そこで今回は、そのタイミングに注目して整理してみます。

周知・意向確認のタイミング

まず、育児・介護それぞれの全体像を確認してみます。このスケジュールを把握しておくだけで現場で比較的スムーズに対応できるはずです。

育児・介護時期実施タイミング実施内容
育児妊娠の報告時労働者から妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出があった時(a)「育児休業制度等に関する事項の個別周知」および「育児休業取得意向の個別確認」
(b)「仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取と配慮」
子が3歳になる前労働者の子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間(c)「柔軟な働き方を実現するための措置の個別周知」および「制度利用の意向確認」
(d)「仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取と配慮」
介護40歳到達時【次のいずれか】
・労働者が40歳に達する日の属す
 る年度(1年間)
・労働者が40歳に達する日の翌日
 から1年間
(e)介護休業制度等に関する事項について情報提供
介護に直面した時家族の介護が必要になったと申し出た時(f)「介護休業制度等に関する事項の個別周知」および「介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用意向の個別確認」

似たような内容ばかりで混乱してしまうね。

ではそれぞれの実施内容を順番にみていきます。

妊娠の報告時(育児)

まずは妊娠の報告があったタイミングでの対応ですが、その前提として育児休業を取得しやすい雇用環境の整備を行う必要があります。

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備

育児休業と産後パパ育休の申し出が円滑に行われるようにするため、事業主は次のいずれかの措置を講じなければなりません。※複数の措置を講じることが望ましい。

  1. 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
  2. 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
  3. 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
  4. 自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

研修を選択する場合、少なくとも管理職には年1回以上実施するようにしないといけないよ。

(a)「育児休業制度等に関する事項の個別周知」および「育児休業取得意向の個別確認」

育児休業を取得しやすい雇用環境が整備されている状況において、本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度等に関する次の事項の周知と休業の取得意向の確認を、個別に行わなければなりません。

個別周知・意向聴取の時期労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出たとき
周知事項(1) 育児休業・産後パパ育休に関する制度
(2) 育児休業・産後パパ育休の申し出先
(3) 育児休業給付に関すること
(4) 労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
個別周知・意向確認の方法(1) 面談 (2) 書面交付 (3) FAX (4) 電子メール等 のいずれか
※(3)、(4)は労働者が希望した場合

当然ですが取得を控えさせるような形での個別周知と意向確認は認められません

(b)「仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取と配慮」

意向聴取配慮についてそれぞれ確認します。

意向聴取

事業主は、子供や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する次の事項について、労働者の意向を個別に聴取しなければなりません。

意向聴取の時期(1) 労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出たとき ※(b)
(2) 労働者の子が3歳の誕生日の1カ月前までの1年間 ※(d)
  → 1歳11カ月に達する日の翌々日から2歳11カ月に達する日の翌日まで
聴取内容(1) 勤務時間帯(始業および終業の時刻)
(2) 勤務地(就業の場所)
(3) 両立支援制度等の利用期間
(4) 仕事と育児の両立に資する就業の条件(業務量、労働条件の見直し等)
意向聴取の方法(1) 面談 (2) 書面交付 (3) FAX (4) 電子メール等 のいずれか
※(3)、(4)は労働者が希望した場合

意向聴取は「育児休業後の復帰時」や「労働者から申出があった際」等にも実施することが望ましいとされています

両立支援制度とは

育児や介護において、仕事と家庭の両立を支援するための制度です。具体的には、育児休業、介護休業、短時間勤務制度、所定外労働の免除、深夜業の制限などがあります。

配慮

事業主は聴取した労働者の仕事と育児の両立に関する意向について、自社の状況に応じて個別に配慮しなければなりません。

具体的な配慮の例
  • 勤務時間帯、勤務地にかかる配置
  • 両立支援制度等の利用期間等の見直し
  • 業務量の調整
  • 労働条件の見直し 等

「子に障害がある場合等で希望するときは、短時間勤務制度や子の看護等休暇等の利用可能期間を延長すること」、「ひとり親家庭の場合で希望するときは、子の看護等休暇等の付与日数に配慮すること」が望ましいとされています。

子が3歳になる前(育児)

続いて子供が3歳になる前のタイミングで行うべきことですが、こちらも前提として、育児期の柔軟な働き方を実現するための措置を整備しておく必要があります。

育児期の柔軟な働き方を実現するための措置

事業主は次の5つの中から、2つ以上の措置を選択して実施する必要があります。

柔軟な働き方を実現するための措置
  • 始業時刻の変更
  • テレワーク等(所定労働時間を変更せず、月10日以上)
  • 保育施設の設置運営等
  • 養育両立支援休暇の付与(所定労働時間を変更せず、月10日以上)
  • 短時間勤務制度(所定労働時間を原則6時間とする措置を含む)

※2と4は、原則時間単位で取得可とする必要があります

事業主がこの措置を選択する際、過半数組合等からの意見聴取の機会を設ける必要があります。

(c)「柔軟な働き方を実現するための措置の個別周知」および「制度利用の意向確認」

選択した柔軟な働き方を実現するための措置について個別の周知および制度利用の意向確認を行う必要があります。

周知時期労働者の子が3歳の誕生日の1カ月前までの1年間
 → 1歳11カ月に達する日の翌々日から2歳11カ月に達する日の翌日まで
周知事項(1) 選択した「柔軟な働き方を実現するための措置」の内容
(2) 対象措置の申出先
(3) 所定外労働(残業免除)・時間外労働・深夜業の制限に関する制度
意向聴取の方法(1) 面談 (2) 書面交付 (3) FAX (4) 電子メール等 のいずれか
※(3)、(4)は労働者が希望した場合

子供が3歳になる前のタイミング以外でも、育児休業後の復帰時や短時間勤務や対象措置の利用期間中など、定期的に面談を行うことが望ましいとされているよ。

(d)「仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取と配慮」

仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取と配慮を行う必要があります。これについては先で掲載している内容と同じになります。

(b)「仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取と配慮」

40歳到達時(介護)

まずは40歳到達時での対応ですが、その前提として介護離職防止のための雇用環境整備を行う必要があります。

介護離職防止のための雇用環境整備

介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は次のいずれかの措置を講じなければなりません。※複数の措置を講じることが望ましい。

  1. 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
  2. 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
  3. 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
  4. 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関す方針の周知

介護両立支援制度等には、「介護休暇に関する制度」、「所定外労働の制限に関する制度」、「時間外労働の制限に関する制度」、「深夜業の制限に関する制度」、「介護のための所定労働時間の短縮等の措置」があげられます。

(e)介護休業制度等に関する事項について情報提供

労働者が介護に直面する前の早い段階(40歳等)で、介護休業や介護両立支援制度等の理解と関心を深めるため、事業主は介護休業制度等に関する次の事項について情報提供しなければなりません。 ※各種制度の趣旨・目的を踏まえ情報提供することが望ましい。

意向聴取の時期(1) 労働者が40歳に達する日(誕生日前日)の属する年度(1年間)
(2) 労働者が40歳に達する日の翌日(誕生日)から1年間 のいずれか
聴取内容(1) 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
(2) 介護休業・介護両立支援制度等の申出先
(3) 介護休業給付金に関すること
意向聴取の方法(1) 面談 (2) 書面交付 (3) FAX (4) 電子メール等 のいずれか
※(3)、(4)は労働者が希望した場合

介護保険制度についても併せて周知することが望ましいとされているよ。

介護に直面した時(介護)

実際に家族の介護に直面したと労働者から申出があった場合の対応です。

(f)「介護休業制度等に関する事項の個別周知」および「介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用意向の個別確認」

介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、事業主は介護休業制度等に関する次の事項の周知介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません

個別周知・意向聴取の時期労働者から介護に直面した旨の申出があったとき
周知事項(1) 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
(2) 介護休業・介護両立支援制度等の申出先
(3) 介護休業給付金に関すること
個別周知・意向確認の方法(1) 面談 (2) 書面交付 (3) FAX (4) 電子メール等 のいずれか
※(3)、(4)は労働者が希望した場合

こちらも育児と同様、取得を控えさせるような形での個別周知と意向確認は認められません

おわりに

育児や介護に関する周知や意向確認のタイミングを整理してみましたが、実際には「何を・いつ」行うべきかを体系立てるのは簡単ではありません。企業の実務では、ある程度ルーティーン化しておくことで、担当者が迷わず対応できる仕組みを整えておくことが重要だと感じます。

また、育児・介護に関する法律が次々と改正される中、人手不足の中小企業にとって長期休業は大きな負担になるという点は理解できます。しかし、他社で可能な対応が自社ではできないという状況が続くと、従業員との信頼関係が損なわれ、モチベーション低下や、最悪の場合は退職につながるリスクもあります。

だからこそ、「周知・意向確認・配慮」を単なる事務手続きとして処理するのではなく、「最近どう?」「両立できている?」といったコミュニケーションのきっかけとして活用できれば、より働きやすい職場づくりにつながるのではないかと思います。