退職の申し出はいつするの? ~退職届の提出時期について~

労務関係

昔は一つの会社で定年まで働く終身雇用が一般的でしたが、今は人手不足の影響もあり、人材の流動化が激しい時代です。新卒の場合では最初に入る会社はスキルアップと割り切っている学生もいるようです。転職だけでなく、他にも家庭の都合やフリーランスを目指すなどで会社を退職する方もいると思います。

そして退職にあたっては会社への申し出が必要であり、円満退社を目指す場合は主には就業規則に則って進めることになります。今回はその申し出のタイミングを中心にまとめていきます。

「退職願」と「退職届」の違い

退職に際し提出することになる書面として退職願退職届があります。同じものと思われがちですが実は用途が異なりますので確認してみます。

退職願

その名の通り退職を願い出て会社との合意による退職を目指すための書面です。

会社と退職に向けて話し合うことになりますので、会社側から退職を引き留められたり、退職日変更の交渉を持ちかけられたりする場合もあります。

退職届

会社に対して「退職します(労働契約を解約します)」と退職の意思表示を一方的に行うための書面です。

退職願との違いは、会社との交渉を経ずに「〇月〇日をもって退職します」と通告する書類であるということですね。会社側は退職を引き留めたりする可能性はありますが、退職届の場合は交渉に応じる必要はないということになります。

退職願を提出して交渉したのち、退職日が決まったらあらためて退職届を提出するという場合もあれば、既に次の会社が決まっているため、会社からの引き留めや退職日の変更とった交渉に一切応じる気はないという場合には最初から退職届を使用することになります。

「退職願」か「退職届」、どちらを使う?

円満退社を目指すのであればまず退職願を提出して会社の承諾を得ましょう。

ちなみに会社が承諾すれば退職届を改めて提出する必要はありません。(もちろん提出しても問題ありません。)

会社の承諾が得られなかったり、既に退職の意思が固く退職日の変更などにも応じるつもりはないという場合は退職届を提出して意思を伝えることになります。

辞表とは?

テレビドラマなどで「辞表」を出す場面を見たことがあるかもしれませんが、辞表は会社役員や公務員が退職を申し出る場合に使用する書面です。職場との雇用関係にない人が、任命されている職務を辞める際に提出するものであるため、一般的な会社員は使用することはありません。

退職を申し出る時期

退職日の2週間前までに会社に申し出れば良いんだよね?

そのとおりです。民法第627条1項に期間の定めのない雇用契約における解約について定められています。

民法627条1項

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

就業規則上の定めとの違い

実際は会社の就業規則で「退職日の○日前までに申し出ること」と定めている場合がほとんどです。

そうすると民法か就業規則かどちらに従えばよいのかな?

優先順位ということであれば民法の方が高くなります。ただし、この民法の定めは任意規定のため会社と従業員が合意すれば変更が可能ということになります。

そのため、就業規則に「1ヵ月前に申し出ること」など、2週間前より早い期限が定められていたとしても違法にはなりません。会社は引き継ぎなどをふまえた余裕のある期間を設け、お互い合意のうえで円満に退職ができるようにするために早い期限を設けているということになります。

そのため家庭の都合や体調不良などの特別な事情がないなら、就業規則に従うべきということになりますね。

就業規則の期限を守る必要があるのか?

でも強制じゃないなら就業規則を守る必要はないよね?

退職に際して業務の引き継ぎを行うことは、会社に対する信義則上の義務であると考えられるため、引き継ぎを行わず退職したことで、会社が何か損害を被ったという場合、その損害賠償請求ができるという可能性があります。

ただし、「6ヵ月前に申し出ること」など、退職までの期間があまりに長すぎる場合、その規定自体が無効になる場合もあります。

退職前の有休消化

有給休暇は、労働者の権利のため退職の申出後であろうと自由に取得することができます。当然、退職直前にまとめて取得することも可能です。

ちなみに、会社は時季変更権により、業務の正常な運営を著しく妨げる場合は有給休暇の時期を変更することができますが、退職日が差し迫っている場合は、そもそも変更する時季を指定できないため、時季変更権を行使できない場合がほとんどです。

有休も退職した後では使えないし、やっぱり早めに申出ておく方が良いね。

そうですね。円満退社のためにも、有休消化期間をふまえた早めの時期に申し出した方が良いですね。例えば就業規則での申出期限が1ヵ月前で、有休を30~40日消化するという場合なら3か月程度前に申し出ておけば、引き継ぎ期間も確保できるので十分かと思います。

契約社員

契約社員の場合、原則として契約期間の途中に退職することはできません。契約社員は期間を定めて会社と契約しており、契約を履行する義務があるためです。そのため社員都合で一方的に退職をすると、会社側から損害賠償請求をされる可能性もあります。

ただし、次の場合は期間の途中でも退職することができます。

  1. 雇用期間が1年を超える有期労働契約で、労働契約期間の初日から1年を経過している場合
  2. やむを得ない理由がある場合
  3. 会社との合意がある場合

それぞれ確認してみます。

雇用期間が1年を超える有期労働契約で、労働契約期間の初日から1年を経過している場合

この根拠は労働基準法第137条に定められています。

労働基準法第137条

期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第14条第1項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成15年法律第104号)附則第3条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。

1年を超える契約の途中で1年経過していれば、従業員側から退職を申し出ることができるようになるんだね。

ただし「1年を超える期間の契約」が対象ですので、1年契約を更新している場合は対象にはならないので注意しましょう。

やむを得ない理由がある場合

この根拠は民法第628条の定めによります。

民法第628条

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

そしてやむを得ない理由の一例としては次のものがあげられます。

  • 病気やけがによって働けなくなった
  • 家族の介護をすることになった
  • ハラスメントを受けた

会社との合意がある場合

従業員と会社が話しあってお互いに合意できれば契約途中でも退職は可能です。

おわりに

会社は引き継ぎ期間などをふまえて就業規則で退職の申出時期を定めています。従業員も基本的にはそのルールを遵守するはずですが、会社に不満をもっている従業員の場合、民法の規定をもちだし2週間前での申出により退職を求めるケースもあったりします。

個人的には引き継ぎは業務命令であり、きちんとしなければ会社だけでなく、何の罪もない後任の人へも迷惑をかけてしまいます。そして給料をもらっている以上は業務命令を遵守する必要がり、そのためには就業規則に則り退職を申し出る方が良いと考えています。

従業員の立場で考えれば、会社からの退職時期の変更にまで応じることはないですが、円満退社のために少なくとも就業規則を遵守した申出は必要かなと思います。