採用面接は、応募者のスキルや適性を見極める重要な場であると同時に、企業としてのコンプライアンス意識が問われる場でもあります。厚生労働省からは、採用選考において応募者の「基本的人権の尊重」と「適性・能力に基づく選考」を徹底するよう求められており、これに反する質問は、就職差別につながるとして禁じられています。そのため本内容では、面接官が聞いてはいけないNG質問、質問の意図に配慮が必要な要注意の質問、そして代わりに聞くべき適切な質問の例をそれぞれみていこうと思います。
聞いてはいけないNG質問の3大カテゴリー
採用選考で配慮すべき事項は、大きく以下の3つのカテゴリーに分類されています。面接官の中には気軽な話題から話しやすい空気を作ろうとする配慮という場合もありますが、思わぬところでコンプライアンス違反となってしまう可能性があるため注意が必要です。
本人に責任のない事項の把握
まず本人に責任のない事項を把握するような質問はNGになります。これらの質問は、応募者の適性・能力を中心とした選考を行うのではなく、本人の責任でないことがらを選考基準の一つにしようとしているとみなされてしまう可能性があります。
これらは個人情報やプライバシーに関わることでもあります。
(1) 本籍・出生地に関すること
- 本籍地はどこですか?
- あなたの出身地はどこですか?
- 生まれてからずっと現住所ですか?

戸籍謄本や本籍地の記載された住民票の提出を求めることもNGになります。
(2) 家族に関すること
- ご家族の職業・役職・学歴・収入は?
- ご家族の健康状態(病歴)は?
- ご家族はどこの会社に勤めていますか?また役職は何ですか?

家族に関する情報は、本人の能力と無関係なので選考を本人の責任でないことがらで判断してはダメだよってことだね。
(3) 住宅・生活環境に関すること
- 家の広さや間取りは?
- 自宅までの略図を書いてください。
- ○○町の△△はどのへんですか。

自宅までの略図は、身元調査につながるおそれがあります。法律では、採用時の身辺調査を禁止してはいませんが、厚生労働省では、公正な採用選考を行うため採用選考時に配慮すべき事項としてとりあげています。
本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握
思想・信条や宗教、支持する政党、人生観などは、信教の自由、思想・信条の自由など、憲法で保障されている個人の自由権に属することがらであり、それを採用選考に持ち込むことは、基本的人権を侵すことにつながります。
(4) 宗教に関すること
- 信仰している宗教はありますか?
- あなたの家族は、何を信仰していますか。
- あなたは、神や仏を信じる方ですか。
個人の信仰の自由を侵害する恐れがあります。
(5) 支持政党に関すること
- 尊敬する政治家は誰ですか?
- 支持している政党はありますか?
- 政治や政党に関心がありますか?
個人の政治活動の自由を侵害する恐れがあります。
(6) 思想・信条に関すること
- 購読している新聞や愛読書は?
- 人生観や生活信条は?
- あなたは、どんな本を愛読していますか?
- 尊敬する人物や信条としている言葉は?
本人の思考や信条の自由に関する事項になります。
(7) 社会活動に関すること
- 労働組合への加入状況や活動歴は?
- 加入団体を教えてください。
個人の結社の自由に属する事項になります。
その他、不適切と考えられる質問
性別を理由(または前提、背景)とした質問は、男女雇用機会均等法の趣旨に違反する採用選考につながります。また、応募者に対して均等な機会を与えなくてはいけません。障がい者や難病を抱えている人、LGBTなどの性的マイノリティーなど、特定の人を選考から除外することも違法となる可能性があります。
(8) 結婚・出産に関すること
- 結婚の予定はありますか?
- 子どもを産んでも仕事を続けますか?

結婚や出産に関する質問は男女雇用機会均等法第5条に抵触するおそれがあります。
(9) 資産・貯金に関すること
- どの程度貯金していますか?
- 資産はどのくらいですか?
この質問もプライバシーの侵害にあたります。
(10) 身体的特徴や健康状態、セクハラ発言
- 短所はなんですか?(身体的な特徴を短所と考える場合があるため)
- スリーサイズは?

合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断(健康診断書の提出)の実施は、応募者の適性と能力を判断する上で必要ない事項まで把握する可能性があるため、就職差別につながるおそれがあります。
質問の仕方・意図に配慮が必要な質問例
以下の質問は、その意図が差別的な意味合いを含むと受け取られたり、業務上不必要な情報収集とみなされたりするリスクがあります。質問の目的を明確にし、慎重に取り扱いましょう。
| 質問例 | 意図すべき公正な目的 | 注意点と代替質問 |
|---|---|---|
| 転勤・残業は可能ですか? | 業務遂行に必要な労働条件確認のため | 男女雇用機会均等法に注意。性別やライフイベントを理由に質問したり、回答により労働条件を変えたりすることはNGです。応募者全員に、業務上必要であるとして同じ質問をしましょう。 |
| 育児や介護の予定・有無はありますか? | 業務時間や勤務地に影響を与える制約条件確認のため | 質問の目的が合理的配慮の必要性の確認に限定される必要があります。女性に限定して質問するのは男女雇用機会均等法違反となるためNGです。採否の判断基準にすることもできません。 |
| 犯罪歴はありますか? | 職務の信用性・適格性の確認のため | 質問が許されるのは、金融・警備など法令で制限があるなど客観的に合理的な必要性がある場合に限られます。必要性が認められない場合はプライバシー侵害となります。 |
| 現在の健康状態に、職務を遂行する上で懸念事項はありますか? | 職務を安全かつ継続的に遂行できるか確認のため | 過去の病歴全てを聞くのはNG。現在、応募職種の業務を遂行する上で具体的な支障がないか、という視点に限定して質問しましょう。 |

これらの質問をする際は必ず目的を伝え、応募者からの同意を得てから行うようにしましょう。
健康状態に関する質問について
健康状態に関する質問は全てNGということではなく、合理的・客観的に必要性が認められるのであれば質問は可能です。
採用し労働契約が成立すると解雇については厳しい制限があるため、企業には採用の自由が認められており、応募者の身辺調査をしたり、健康状態を確認したりする、調査の自由も認められています。
とはいえ、採用にあたり健康状態を確認する場合、合理的・客観的な必要性を伝えつつ、応募者の個人情報にもあたりますので、次の点を踏まえておこなう必要あります。

目的は「入社後の勤務が問題なくこなせる健康状態であるか」を確認するためになります。

実際に健康診断の結果を出してもらったりしても良いのかな?

健康診断結果を出してもらうこともできますが、個人情報にもあたるため、提出を求める場合、一般健康診断の項目までにしておくべきかと思います。
一般健康診断の項目は下のリンクから厚生労働省のデータで確認できます。
NGではない能力・適性を見極めるための適切な質問例
不適切な質問を避け、応募者の「適性」と「能力」を正しく見極めるための質問例をあげてみます。
| 見極めたい要素 | 適切な質問例 | NG質問からの切り替え方 |
|---|---|---|
| ストレス耐性・困難への対応 | 「これまでで最も困難だった経験と、それをどう乗り越えたか教えてください。」 | 本人が主体的に解決した経験を聞きましょう |
| 職業観・倫理観 | 「あなたが仕事をする上で大切にしている価値観は何ですか?」 | 仕事に限定した価値観を問うことで、企業理念とのマッチ度を測れます。 |
| 職務への意欲・継続性 | 「当社の仕事内容で、特に長期的に取り組みたいと考えている分野は何ですか?」 | 職務への意欲やキャリアプランを具体的に聞きましょう。 |
| 居住地・通勤への懸念 | 「当社の〇〇営業所(勤務地)への通勤手段と、所要時間はどれくらいですか?」 | 通勤の現実的な実現可能性を確認する目的で質問しましょう。 |

確かに実際の面接でも良く聞かれる質問な気がするね。
面接で聞いてはいけない質問をすることの企業リスク
採用面接時に不適切な質問をすることは、単なるマナー違反ではなく、企業経営にも影響を及ぼす場合がありますので、どのようなリスクがあるかあげてみます。
行政指導・罰則
応募者からの通報により、労働局から指導や改善命令を受ける可能性があります。改善命令に従わない場合、職業安定法違反として、行政指導や罰則の対象となるおそれがあります。
訴訟・損害賠償
不適切な質問や、それに基づく不採用が原因で、基本的人権の侵害や就職差別として応募者から訴訟を起こされる可能性があります。

憲法や民法の不法行為、男女雇用機会均等法違反が問われる可能性があります。
企業ブランド・採用力の毀損
面接での不適切な言動が、SNSや就職口コミサイトに書き込まれると、瞬く間に拡散されます。その結果、企業の評判(ブランドイメージ)が著しく低下し、優秀な人材が集まらなくなり採用力の低下を招く可能性があります。

確かに最近はSNSなんかで情報があっという間に拡散されるからね。
従業員の士気低下
差別的な選考基準が社内で共有されていることが露見すれば、既存の従業員が「公正さに欠ける会社だ」と感じ、エンゲージメントや士気が低下する原因となってしまいます。
おわりに
採用面接では法律や指針によりNGとなる話題がありますが、雰囲気を和らげようと配慮から聞いてしまうという場合もあります。ひと昔前ならなんでもないような会話が今ではNGという場合もありますので面接をする側もあらためて確認しておいたほうが良いでしょう。
氷河期世代の自分は就職活動中に圧迫面接を受けたり、人格や人生観を否定されるような発言を受けたりしたこともありましたが、人手不足の近年ではそんな対応をする企業はいっそう採用が難しくなってしまいますので、この内容が、法律や厚生労働省の指針をふまえ、公正な面接が行われるための参考にしてもらえればありがたいかと思います。

