遅刻や早退をした場合、半日休暇や時間単位休暇を使えば給与に影響はありませんし、企業によっては電車の遅延の場合は遅延理由書があれば遅刻による減給はない場合もあります。 とはいえ実際に遅刻や早退で有給休暇を使わなければ減給となる企業もあります。今回はこういった場合、どうやって減給となる額が計算されるのかを確認してみます。
ちなみに1日単位の控除方法は別に記載しています。ここで確認する内容はその補足になります。
※「欠勤した場合の給料はどうなるの ~控除の計算方法を考えてみる~」の記事はコチラ
欠勤した場合の給料はどうなるの ~控除の計算方法を考えてみる~
ノーワーク・ノーペイの原則
欠勤控除の場合と同様、遅刻や早退の場合もノーワーク・ノーペイの原則に基づき、労働者が「労務」を提供していない時間分について企業は賃金を支払う義務はないということになります。

「労務提供のない時間について賃金を支払はない」ということで、後述している減給の制裁とは異なります。減給の制裁は懲戒処分の一つとなります。
月給制について
一般的に月給制と言われる給与形態は、完全月給制、月給日給制、日給月給制の3種類あります。このうち完全月給制の場合は控除対象とはなりません。詳細はコチラに記載しています。
手当の取扱い
手当についても前の記事に記載しています。詳細はコチラをご覧ください。
その他の注意点
その他にもいくつか注意する点があるので見ていきます。
1分単位で計算
遅刻や早退での控除額は1分単位で計算するようにしましょう。計算しやすいようにということで30分単位や1時間単位に切り上げることはできません。ノーワーク・ノーペイの原則に則り、不就労分を控除することになります。

切上げて計算してしまうと実際に働いた時間分の給料が支払われないということになるため、労働基準法第24条1項で定められている賃金全額払いの原則に違反する事になるので注意しましょう。
残業との相殺

遅刻しても残業と相殺してくれると助かるね。

残業との相殺はできる場合とできない場合があるので確認してみましょう。
まず原則として、従業員との合意がない場合は早退・遅刻と残業との相殺はできません。従業員との合意がある、かつ以下の条件を満たす場合は相殺できるケースがあります。
- 遅刻と残業が同日内で、労働時間が8時間を超えない場合
- 早退・遅刻分を翌日以降に相殺することはできません。翌日以降の残業は8時間超となり割増賃金が発生してしまうため。
- 変形労働時間制を採用しており、変形労働時間の枠内で相殺するケース

ただ企業によっては8時間未満でも「所定労働時間を超えたら割増賃金を支払う」という場合もあったりするので、具体的な取り扱いを就業規則で定めておいた方が良いです。
減給の制裁

減給の制裁ってなんなのかな?遅刻と関係あるの?

減給の制裁は企業が従業員に対して行う懲戒処分の一つですね。
労働者が本来得るはずであった賃金から一定額を差し引くことをいいます。就業規則に定めがありその内容に基づいて行う必要があります。一般的には何度注意しても改善されない、企業へ与えた不利益の度合いが大きいといった場合に該当する可能性があります。

ちなみに減給額は労働基準法第91条でその上限が定めれています。
(制裁規定の制限)
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
この条文により就業規則でこの限度額を超える減給処分を規定することはできません。
ちなみにここでいう平均賃金については次のとおりです。
「平均賃金」とは、平均賃金の算定事由が発生した日の直近3カ月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額をいいます(労働基準法第12条)
「直近3カ月間」とありますが、賃金の締切日がある場合(一般的な月給のケース)には、「直近の賃金の締切日」から起算した3カ月間で計算します。
控除額の計算方法
控除額の計算が必要となるのは月給制のうち、上に記載しているとおり月給日給制の場合です。
ちなみに計算方法は法律上の定めはないため、ここでは一般的な計算方法を見てみますが、具体的な内容は就業規則で定めておくべきかと思います。
月平均所定労働時間数を用いる場合
まず最も一般的な計算式がこちらになります。
控除額=月の給与額÷月平均所定労働時間数×遅刻・早退の時間

ちなみに月平均所定労働時間数は次のとおり計算します。
月平均所定労働時間数=(365 – 年間休日数)×1日の所定労働時間÷12
念のために次の給与モデルで計算してみます。
- 基本給:280,000円
- 資格手当:20,000円
- 住宅手当:5,000円
- 通勤手当:10,000円

手当も控除対象とするかどうかは就業規則で定めておきましょう。ここでは資格手当と住宅手当を控除対象として取扱います。
- 4月中に2時間ほど遅刻があり、その控除額を計算する
- 1日の所定労働時間は8時間
- 年間休日数は121日
- 端数処理:労働者に不利益が及ばないように取り扱います。
- 月平均所定労働時間数:少数点第3位を切上げ
- 控除額:小数点以下を切り捨て
- 控除の対象となる月額給与=305,000円(基本給+資格手当+住宅手当)
- 月平均所定労働時間数=(365日-121日)×8時間÷12ヵ月=162.67時間(小数点第2位切上げ)
- 控除額=305,000円÷162.67時間×2時間=3,749円(小数点以下を切捨て)

端数処理は労働者に不利益が及ばないように、月平均所定労働時間数は切上げ、控除額では切捨てにしているんだね。
月の所定労働時間数を用いる場合
続いて月の所定労働時間数を用いる場合です。
控除額=月の給与額÷月の所定労働時間数×遅刻・早退の時間

ちなみに月の所定労働時間数とは、就業規則や雇用契約であらかじめ定められているその月に働くべき労働時間数のことですね。
こちらも先ほどと同じ給与モデルで計算してみます。欠勤控除に関する状況は次のとおりです。
- 基本給:280,000円
- 資格手当:20,000円
- 住宅手当:5,000円
- 通勤手当:10,000円

先ほどと同様、資格手当と住宅手当を控除対象として取扱います。
- 4月中に2時間ほど遅刻があり、その控除額を計算する
- 1日の所定労働時間は8時間
- 4月の所定労働日数は21日
- 端数処理:控除額において小数点以下を切り捨て
- 端数処理に関しては、特に法律で規定されていませんが労働者に不利益が及ばないよう、切り捨てすることが妥当とされています。
- 控除の対象となる月額給与=305,000円(基本給+資格手当+住宅手当)
- 月の所定労働時間数=8時間×21日=168時間
- 控除額=305,000円÷168時間×2時間=3,630円(小数点以下を切捨て)

月の所定労働時間数を使う場合の方が控除額が少なくなるね。

逆に所定労働日数が20日以下になると月の所定労働時間数を使う場合の方が控除額が多くなります。
月平均所定労働時間数を用いた場合は控除額の時間単価がどの月でも同じになるので、月による変動はなくなりますよ。
分単位での計算例
ほとんど上の例と同じですが、念のため分単位での計算もしてみます。ここでは月平均所定労働時間数を用いた例をあげておきます。
条件は上の場合と同じですが遅刻の時間数のみ1時間35分にしています。
- 4月中に1時間35分ほど遅刻があり、その控除額を計算する
- 1日の所定労働時間は8時間
- 年間休日数は121日
- 端数処理:労働者に不利益が及ばないように取り扱います。
- 月平均所定労働時間数:少数点第3位を切上げ
- 控除額:小数点以下を切り捨て
- 控除の対象となる月額給与=305,000円(基本給+資格手当+住宅手当)
- 月平均所定労働時間数=(365日-121日)×8時間÷12ヵ月=162.67時間(小数点第3位切上げ)
- 控除額=305,000円÷162.67時間×(1時間+35/60分)=2,968円(小数点以下を切捨て)

先ほどの例とは3の控除額の計算方法のみ違うだけで、控除の対象となる時間数を分単位にしてあるだけだね。月の所定労働時間数を使う場合も同じように計算すれいいね。

細かい控除額の計算では端数の取り扱いで迷う場合が多いです。就業規則で細かく定めがあればそれに従えば良いですが、定めがない場合は職場としてどうするかを決めて計算しましょう。人によって計算方法が違うということがないように注意が必要です。そしてできればその方法を就業規則に定めることまでできると良いですね。
日給月給制、日給制、時給制の場合
それぞれ1日単位、1時間単位で給与額が決まっているはずなので時間単位、分単位に換算して計算します。分単位であれば1時間あたりの給与額を60で割って分単位の額を算出することになります。
おわりに
遅刻や欠勤の場合は有給休暇を使って対応する場合が多いことで、実際に計算する際にその方法が良く分からないという人もいるかと思います。企業の就業規則でも細かい計算方法の規定がないという話も良く聞きます。逆に規定がない中では計算方法を巡りトラブルとなる可能性もあります。企業、従業員の双方に納得感が得られるように事前に準備をしておくことをお勧めしたいと思います。

