5年を超えると有期雇用ではなくなるの? ~無期転換ルールとは ~

労務関係

今回は無期転換ルールです。平成25年の労働契約法第18条の改正に伴い始まった制度ですが、働く人の雇用を安定させるために導入されたもので、条件を満たせば「契約期間の定めがない雇用」に切り替えることができるというものです。

中小企業ではそもそも更新時に労働条件通知書を出していないなど、実質的に無期雇用と捉えられてしまうような状況になっている場合も少なくありません。その結果、社員の方との認識のずれによりトラブルになるということもよく聞きます。そういった場合でもこの制度により、申し込みさえすれば無期雇用に転換するため、会社の期間満了による雇止めは無効になるというケースもあるようです。今回はこのルールの内容や条件などについて確認していきます。

無期転換ルールとは?

まずは無期転換ルールについて確認です。これは労働契約法第18条に基づき、有期労働契約(契約社員、アルバイトなど)が通算5年を超えて更新された場合に労働者が申し込むことで期間の定めのない無期契約に転換できる制度です。

後述しますが、通算5年とは、あくまでも通算の契約期間のことです。5年を超えて働いていることが条件とされているわけではないので注意してください。

有期雇用労働者とは?

企業と期間を定めて労働契約を締結する労働者ことを言います。

契約社員、パートタイマー、アルバイト、嘱託社員、契約社員などが有期雇用契約となる場合が多いよね。

有期契約の場合、その期間が満了となると契約更新しなければ雇用契約は終了となります。

その他にも次の特徴があります。

1回の契約期間の上限は3年

有期雇用契約は、労働契約法第14条により原則的に3年以下と定められています。

労働契約法第14条

労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあっては、5年)を超える期間について締結してはならない。

  1. 専門的な知識、技術又は経験であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約
  2. 満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約

基本は3年ですが専門的職種と60歳以上の労働者は5年までになっています。

契約期間中の契約解除ができない

有期雇用契約の場合、契約期間中の解除は、使用者・労働者ともに自由にできないことになっています。これは民法628条で定められています。

民法628条(やむを得ない事由による雇用の解除)

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

一方的に契約を解除してしまうと損害賠償リスクがあります。

契約を解除するためのやむを得ない事由がないとダメなんだね。

やむを得ない事由として病気やケガで働けないという場合やパワハラを受けたという場合などが考えられますね。会社から契約を解除する場合は事業の継続が不可になったという場合があげられます。

他にも会社側からの契約解除ができないことが労働契約法第17条に定められています。

労働契約法第17条(契約期間中の解雇等)

使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

尚、雇用期間が1年を超える有期労働契約で、労働契約期間の初日から1年を経過している場合は、いつでも退職を申し出ることができます。

労働基準法第137条

期間の定めのある労働契約(その期間が1年を超えるものに限り)を締結した労働者は、民法第628条の規定にかかわらず、申し出によりいつでも退職することができる

「民法628条の規定にかかわらず」なので損害賠償リスクなく退職ができるということだね。

合意による解除

当然ですが労使が相談し合意すれば途中解除できます。会社に相談し了承を得られれば契約途中(勤続1年未満)でも退職できます。

企業側から途中解除する場合は、雇止めとならないように注意が必要です。

無期転換の条件

続いて無期転換を申し込むための条件をみていきます。次の条件をすべて満たす必要があります。

有期労働契約の通算期間が5年を超えている

同一の使用者の間で締結された2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超えていることが要件となります。

ちなみに「同一の使用者」とは、労働契約の締結主体(企業)が単位となっています。例えばA工場からB工場に勤務場所を変更するなど、事業場を変えても企業自体が同じならば雇用契約は続いているということなります。

そして、契約期間が5年を経過していなくても、例えば、契約期間が3年の有期労働契約を更新した場合は、通算契約期間が6年になるため、4年目にはすでに無期転換申込権が発生していることになります。参考に厚生労働省が出している図を貼っておきます。

(参照)厚生労働省無期転換ルールハンドブック P1より

申込をしたらその契約期間から無期に変わるのかな?

転換するタイミングは次の契約期間からになります。1年契約を更新し続ける場合、6年目の契約期間中に無期転換の申し込みができることになり、申し込めば次の7年目から無期転換になります。

契約の更新回数が1回以上

契約更新等により、同一の使用者との間で2以上の有期労働契約を締結したことが無期転換申込権発生の要件となります。

1回以上契約を更新していてその合計期間が5年を超えればOKということだね。

労働者が申し込みを行う

労働者が自ら申込みをする必要があります。申込みは口頭でも書面でも可能ですが、証拠を残すために書面での申込みが望ましいです。

自動的に無期雇用に転換されるわけではないんだね。

ちなみに申し込みをした日からすぐに無期雇用になるわけではなく、申込時点の有期労働契約が終了する日の翌日から無期労働契約となります。

使用者側は拒否できない

労働者から無期転換の申し込みがあった場合、企業は断ることができません。 労働者からの申し込みがあった時点で、契約期間終了日の翌日から、雇用者と労働者の間で無期雇用契約が開始されることになります。

でも申し込み時点の契約期間が満了した翌日から無期雇用に転換されるわけだから、そうしたくない企業は契約期間満了で雇止めにしちゃったりしないのかな?

その場合でも申し込みにより成立する無期転換契約を拒否することはできず、従前の内容が引き継がれたうえで無期転換契約となります。このことは厚生労働省のガイドブックにも掲載されています。

会社が無期転換を認めず、現在締結している有期労働契約の満了をもって有期労働契約関係を終了させようとした(雇止めしようとした)としても、その雇止めをもって当然に無期転換申込権の行使により成立した始期付無期労働契約を解約(解雇)することにはならず、無期労働契約の関係は終了していないと考えられます

厚生労働省無期転換ガイドブックQ&Aより

他にも契約期間中の解除や無期転換権が発生する前の雇止めについては労働契約法第19条の規定により制限されています。

労働契約法第19条

有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

  1. 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
  2. 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は雇止めは無効となることが定められています。

5年のカウント方法

基本は上で紹介している通り、同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が、5年を超えていることが要件であり、契約期間が5年を経過していなくても、例えば、契約期間が3年の有期労働契約を更新した場合は、通算契約期間が6年になるため、4年目にはすでに無期転換申込権が発生します。

空白期間(無契約期間)がある場合

同一の使用者との間で有期労働契約を締結していない空白期間(無契約期間)がある場合、その長さが一定以上になるとそれ以前の契約期間は通算対象に含まれなくなります。

空白期間(無契約期間)の前の通算契約期間が1年以上の場合

空白期間(無契約期間)が6ヶ月以上あれば、その無契約期間より前の契約期間は、通算契約期間に算入されません(5年のカウントに含まれずクーリングされます。)。

空白期間(無契約期間)の前の通算契約期間が1年未満の場合

空白期間(無契約期間)前の契約期間が下の図の左欄に該当し、空白期間(無契約期間)が下の図の右欄に該当するときは無契約期間より前の契約期間は5年のカウントに算入されません(5年のカウントに含まれずクーリングされます。)。

空白期間(無契約期間)前の通算契約期間空白期間(無契約期間)
2ヶ月以下1ヶ月以上
2ヶ月超~4ヶ月以下2ヶ月以上
4ヶ月超~6ヶ月以下3ヶ月以上
6ヶ月超~8ヶ月以下4ヶ月以上
8ヶ月超~10ヶ月以下5ヶ月以上
10ヶ月超~6ヶ月以上

空白期間(無契約期間)が【空白期間前の通算契約期間÷2】(ただし端数は1ケ月単位で切上げ)以上であれば、空白期間より前の契約期間は5年のカウントから除外されるということですね。

参考に厚生労働省の無期転換ガイドブックの説明事例を貼っておきます。

(参照)厚生労働省無期転換ルールハンドブック P4より

無期転換ルールの特例

この無期転換ルールにも特例がありその対象は次の3つになります。

  1. 高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者
  2. 定年に達した後引き続いて雇用される有期雇用労働者
  3. 大学等及び研究開発法人の研究者、教員等

高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者

正確には「5年を超える一定期間内に完了することが予定されている業務に従事する高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者」が特例の対象になります。

特例が適用されるとその業務に従事している期間は、無期転換申込権が発生しません。ただし、無期転換申込権が発生しない期間の上限は、10年です

高度専門職には年収要件と範囲が定められています。

●年収要件:年間当たりの見込み賃金額が、1,075万円以上

●高度専門職の範囲:

  1. 博士の学位を有する者
  2. 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士または弁理士
  3. IT ストラテジスト、システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者
  4. 特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
  5. 大学卒で5年、短大・高専卒で6年、高卒で7年以上の実務経験を有する農林水産業・鉱工業・機械・電気・建築・土木の技術者、システムエンジニアまたはデザイナー
  6. システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタント
  7. 国等によって知識等が優れたものであると認定され、上記1から6までに掲げる者に準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める者

そしてこの特例の適用を受けるためには、適切な雇用管理に関する計画「第一種計画(厚生労働省/Word)」を作成し、都道府県労働局長の認定を受けることが必要になります。

定年に達した後引き続いて雇用される有期雇用労働者

定年後引き続いて雇用される期間は、無期転換申込権が発生しません。ただしこちらも適切な雇用管理に関する計画「第二種計画(厚生労働省/Word)」を作成し、都道府県労働局長の認定を受ける必要があります。

なお、第二種計画の特例の適用(認定)を受けた場合には、事業主は労働契約の締結・更新時に特例の対象となる継続雇用の高齢者に対しては、定年後引き続いて雇用されている期間が無期転換申込権が発生しない期間であることを書面で明示することが必要です。

例えば58歳から1年更新の契約で5年勤めた場合でも無期転換申込権は発生しないのかな?

この特例はあくまで定年後に引き続いて雇用される場合に限ります。そのため60歳前から契約期間を定めて雇用されている場合は定年とは関係ないため、58歳から1年更新の契約で5年勤めた人は6年目にあたる64歳の契約で無期転換申込権が発生します。

企業側には例えば65歳を第二定年として定めておくなどの対応が求められます。

大学等及び研究開発法人の研究者、教員等

無期転換申込権発生までの期間が10年になります。特例の対象者は厚生労働省リーフレット「大学等及び研究開発法人の研究者、教員等に対する労働契約法の特例について」で確認ください。

労働条件の明示事項

2024年4月から無期転換申込機会の書面明示無期転換後の労働条件の書面明示が必須となっています。

無期転換申込機会の書面明示

「無期転換申込権」が発生する契約更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができることを書面で明示することが必要になっています。初めて無期転換申込権が発生するタイミングだけでなく、契約を更新する場合は、更新の度に明示が必要になります。

加えて企業は無期転換について適切に相談に応じる体制を整備しておかなければならないことになっていますよ。

無期転換後の労働条件の書面明示

「無期転換申込権」が発生する契約更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件を書面で明示することが必要です。労働条件の明示は、無期転換申込権が生じる契約更新時と、無期転換申込権を行使して無期労働契約が成立した時のそれぞれのタイミングで行わなければいけません。

ちなみに無期労働契約成立時の労働条件明示は、既に明示している労働条件とすべての内容が同じということを書面で明示するという方法でも対応が可能です。

また、労働条件の通知の際は他の通常の労働者との均衡を考慮した事項の説明に努めることが努力義務とされています。

おわりに

今回は無期転換ルールについてみてみました。パートで働いている方などは「責任を負いたくないから無期転換しない」という声も聞かれますが、「無期転換=正社員」というわけではなく、同等の条件を引き継ぎつつ契約期間の定めがなくなる、という形になるため、同じ働き方をしながら、長期で勤めること可能になる、という場合もあります。

昨今の人材不足の状況を考えれば優秀な人は無期転換といわず正規雇用としてどんどん働いてほしいという企業も多いくあります。働き方は人それぞれであり、職業選択の自由もありますので、このルールを企業、労働者で相互に有効活用できれば良いかなと思います。