企業が従業員を募集する際に必要となる求人票ですが、掲載必須の内容や掲載できない内容など法令で定められています。代表的なものでは募集時に理由なく年齢制限をしてはいけないなどあげられます。他にも新卒求人では「青少年雇用情報」の記載が努力義務として求められたりしています。今回はその求人表の記載内容について簡単に確認していこうと思います。
最低限明示しなければならない労働条件
まずは職業安定法で定められている、求人票に最低限掲載しなければいけない労働条件についてです。
- 業務内容
- 契約期間
- 試用期間
- 就業場所
- 就業時間
- 休憩時間
- 休日
- 時間外労働
- 賃金
- 加入保険
- 受動喫煙防止措置
- 募集者の氏名または名称
- 派遣労働者として雇用する場合はその明示
続いてこの項目のなかでの注意点を確認します。
まず、2024年4月の法改正で追加された内容です。
従事すべき業務の変更の範囲
募集時の業務内容だけでなく、将来的に業務の内容が変更する可能性がある場合はその内容を記載しておかなければいけません。
- (雇入れ直後)一般事務
(変更の範囲)当社業務全般 - (雇入れ直後)法人営業
(変更の範囲)製造業務を除く当社業務全般 - (雇入れ直後)経理
(変更の範囲)なし

最近はスペシャリストのように専門的に働きたいという人も多いから、求人票の時点で分かるようにしておく必要があるんだね。
就業場所の変更の範囲
募集時の就業場所だけでなく、転勤などで就業場所が変更する可能性がある場合はその内容を記載しておかなければいけません。
- (雇入れ直後)本社
(変更の範囲)全国の支社、営業所 - (雇入れ直後)〇〇支社
(変更の範囲)本社、▲▲支社、□□支社 - (雇入れ直後)経理
(変更の範囲)なし

最近は「転勤なし」を希望する人が増えていますので、誤解の内容に変更の可能性がある箇所は全て記載するようにしましょう。
有期労働契約を更新する場合の基準
有期労働契約を結ぶ場合、契約期間を明示する必要がありますが、その中で更新に関する内容も記載します。無期転換ルールのこともありますので更新する場合の基準まで記載しなくてはいけません。
※無期転換ルールの記事はコチラ
5年を超えると有期雇用ではなくなるの? ~無期転換ルールとは ~
- 契約の更新:有(契約期間満了時の業務量、勤務成績により判断)
更新上限:有(通算契約期間の上限5年 更新回数の上限4回) - 契約の更新:有(自動更新)
通算契約期間は4年を上限とする - 契約の更新:有(●●により判断する)
更新上限:有(通算契約期間の上限●年/更新回数の上限●回)

有期契約の場合、更新に関する内容が不十分で更新を繰り返していると実質的には無期雇用とみなされる可能性がありますので注意しましょう。
続いてトラブルの多い「固定残業代」の明示です。
固定残業代を採用している場合は「賃金」の項目に明示
まず固定残業代を採用している場合、賃金の項目への記載には次の点に注意する必要があります。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業手当の額と、その手当がどの労働時間に対するものか
- 固定残業時間を超える時間外労働、および休日労働、深夜労働に対しては、割増賃金が別途支払われる旨
- 基本給 250,000円
- 固定残業代 50,000円
- 固定残業手当は、時間外労働25時間分に対する割増賃金として支払う
- 時間外労働が25時間を超えた場合、および休日労働、深夜労働があった場合は、労働基準法に基づき算出した割増賃金を追加で支払う

固定残業代って、実際にそれ以上働けば企業は追加で割増賃金の支払いが必要になるんだから、採用してもあまり意味がないような気がするんだけど?

賃金の面ではむしろ残業しなくても支払うことになるので企業としたらデメリットです。ただ最近は人手不足で求人を出しても応募がこない企業がたくさんあります。そんな中、固定残業代を採用することで月額や年収ベースの賃金総額が大きくなるため、給与が高くみえることになり、他社と差別化できるというメリットがあります。
他にも、実際に残業しない月でも固定でもらえるため従業員のモチベーションを上げるという効果もあります。
求人票に記載できない事項
続いて求人票に記載してはいけない事項についてみていきます。
- 性別(業務上必要な場合は除く)
- 年齢(一定の法定年齢に基づく場合は除く)
- 国籍
- 人種・民族
- 宗教
- 婚姻状況
- 出産・育児
- 障害(合理的配慮が必要な場合は除く)
- 思想・信条
性別と年齢は例外があります。
性別
男女雇用機会均等法で、企業は募集や採用において性別にかかわらず均等な機会を与えなければならないと定められています。具体的には、「男性限定」「女性歓迎」などの表現はNGです。「男性/女性活躍中」や「男女共に活躍中」といった表現が推奨されています。他にも「男性5名、女性3名」と性別で採用人数に差をつける表現、男性と女性で採用条件が異なる募集などはNGになります。
モデルや俳優のような芸術・芸能の分野、守衛や警備員など防犯上の理由がある職種、風紀・宗教・スポーツなど一方の性別であることが求められる場合など、男女均等に取り扱うことが困難なケースでは、性別を限定した求人募集が可能です。また、すでに男女差がある職場環境を改善するために一方の性別を対象として選考を行うことは、「ポジティブ・アクション」と呼ばれ、法律違反とはなりません。

今は女性も男性と同様の仕事をする場合が増えてきているし、募集の段階でも差をつけてはだめだよってことになっているんだね。
年齢
労働施策総合推進法により、年齢による制限はNGとされています。

ちなみに年齢の上限がNGなのはあたり前ですが下限を設けることもNGになります。
上限だけでなく下限を設けることもできません。
年齢については、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に
関する法律(労働施策総合推進法)施行規則第1条の3第1項、により、例外事由が大きく6つに分かれています。
例外事由1号
定年年齢を上限として、その上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
定年が60歳の会社が、60歳未満の人を募集

定年が定められているならその年齢を過ぎている人を雇い訳にはいかないものね。
例外事由2号
労働基準法その他の法令の規定により、年齢制限が設けられている場合
18歳以上の人を募集(労働基準法第62条の危険有害業務)

法令で年齢制限がある業務に従事する人を採用する場合だね。
例外事由3号イ
長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
35歳未満の人を募集(高卒以上・職務経験不問)
令和○○年3月大学卒業見込みの人を募集

この例外事由により募集をする場合、実際の求人では「長期勤続によるキャリア形成を図るため」と一文添えられていることが多いですね。
ただし、この例外事由は次の要件を満たす必要があります。
- 対象者の職業経験について不問とすること
- 新卒者以外の者について、新卒者と同等の処遇にすること
ちなみに、ここでいう「若年者等」とは、基本的には、35歳未満の若年者が想定されていますが、必ずしも35歳未満に限られていません。ただ、定年の定めがある場合に定年まであと数年しかないような、勤続可能期間が極端に短くなる上限年齢を設定して募集・採用することは認められていません。
⇒ おおむね45歳未満が目安となります。
例外事由3号ロ
技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
電気通信技術者として、30~39歳の人を募集
(電気通信技術者は、20~29歳が10人、30~39歳が2人、40~49歳が8人)

この例では30代が極端に少ないので、この年齢層をターゲットに募集をするということだね。
この例外事由にもいくつか注意点があります。
特定の職種とは?
職種は、厚生労働省「職業分類」の小分類もしくは細分類、または総務省「職業分類」 の小分類を参考にすることとされています。

この分類で職種を判断して、その職種に該当する人がが何人いるかを確認するわけだね。
特定の年齢層とは?
30~49歳のうちの特定の5~10 歳幅の年齢層とされています。
相当程度少ないとは?
同じ年齢幅の上下の年齢層と比較して、労働者数が2分の1以下である場合(募集する年齢幅の労働者数が0人である場合を含む)が該当します。

例えば、30~35歳の人数が10人だとした場合、36~40歳の人が5人以下なら「相当程度少ない」に該当することになりますね。
例外事由3号ハ
芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合
演劇の子役のため、○歳以下の人を募集
例外事由3号二
60歳以上の高年齢者または特定の年齢層の雇用を促進する政策(国の施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる人に限定して募集・採用する場合
- 60 歳以上の人を募集
- (人材開発支援助成金の対象者として)15 歳以上45 歳未満の人を募集
※年齢に関する制限について、詳しくは厚生労働省の
労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A
を参考にしてください。
求人情報提供ガイドライン
現在の求人情報はそのほとんどがWEBサイトを中心に求人情報誌や新聞などで公開されています。この「求人情報提供ガイドライン」はそのWEBサイト等を運営する側、つまり求人メディア側に示されているガイドラインです。そのため、求人を出す際は基本的にはこのガイドラインに則ることになります。
求人情報における掲載明示項目および明示に努める項目の区分 が分かりやすく項目ごとに掲載されています。
この中で新卒求人の場合、過去の採用実績などの掲載も求められますので参考に載せておきます。
| 新卒メディアの場合は、過去に採用実績のある主な出身学校名および若者雇用促進法における職場情報(次のA~Cの各類型ごとに1項目以上) | |
|---|---|
| A | 募集・採用に関する状況 ①直近3事業年度の新卒採用者数・離職者数 ②直近3事業年度の新卒採用者数の男女別人数 ③平均勤続年数 |
| B | 職業能力の開発・向上に関する状況 ①研修の有無および内容 ②自己啓発支援の有無および内容 ③メンター制度の有無 ④キャリアコンサルティング制度の有無および内容 ⑤社内検定等の制度の有無および内容 |
| C | 雇用管理に関する状況 ①前年度の月平均所定外労働時間の実績 ②前年度の有給休暇の平均取得日数 ③前年度の育児休業取得対象者数・取得者数(男女別) ④役員に占める女性の割合および管理的地位にある者に占める女性の割合 |

このガイドラインの項目を網羅できれば職業安定法で定められている項目の大部分をカバーできます。
おわりに
人手不足の近年では求職者の取り合いのような状況です。そのため、求人メディアも乱立しており規制は年々厳しくなってきています。ハローワークへの求人であれば職員の方が掲載内容をしっかりチェックしてくれますので、よほど法令違反などはありませんが、各社が自由に掲載できるようなサイトだと、意図せず法令違反の情報になってしまっていた、ということもありえます。
最近は求職者の方も求人情報を見て疑問をもてば、すぐにインターネットで検索して確認できる時代です。ただしい情報が掲載されなければ求人への申し込みも期待できませんので、法令やガイドラインを参考にして、魅力的な求人票を作ってもらえればと思います。

