2021年から育児休業法が段階的に改正された中で、男性版育休ともいわれる出生時育児休業制度がスタートしています。これは今までは育児休業は女性が取得するものという概念を変えて、男性にも積極的に育児休業を取得してもらおうという内容です。
その中で、社会保険料免除要件が変更になっています。従来の内容であれば月末の1日だけ育児休業を取得すれば免除となるため、賞与支給月では特に企業・従業員ともメリットが大きいこともあり、本来の目的にそぐわない利用をされていたという事が改正の理由の一つなのかもしれません。
免除の要件を把握せずに育児休業を取得して当てが外れてしまったということがないように内容を確認してみたいと思います。
かつての免除要件

昔は月末の最終日だけ育児休業をとれば良かったんだっけ?
そのとおりです。念のため従来の免除用件も具体例をあげて確認しておきましょう。
育児休業等開始月から終了予定日の翌日が属する月の前月まで
(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月まで)
では事例をあげて紹介します。
例1)育児休業を5月1日~5月14日まで取得

この場合育児休業終了予定日の翌日が属する月の前月が存在しません。
そのため社会保険料は免除されませんでした。
例2)育児休業を5月31日だけ取得

この場合育児休業終了予定日の翌日が6月1日になります。
そのため5月分の社会保険料は免除されます。
つまり月末の1日だけ育児休業を取得したら免除になったわけですね。そして月額保険料、賞与保険料ともに免除になりました。

そのため、賞与支給月の月末1日だけ育児休業を取得したら、企業、従業員本人ともに賞与に関わる社会保険料が免除されるため、1日だけの育児休業取得者が増えてしまっており、制度の趣旨と反するということですね。

ボーナスから引かれる社会保険料って結構な額になるもんね!
現在の免除要件
次に新しい免除要件を確認していきますが、月額保険料と賞与保険料で要件が異なるため注意してください。
月額保険料の免除要件

以前のように月末1日だけ育児休業を取得するだけじゃダメなのかね?

月額保険料については月末1日だけの取得でも変わらず免除されます。それに加えて月14日以上の育児休業を取得した場合という要件も追加されていますよ。
いずれかに該当したら月額保険料は免除されるため、対象の幅が広がったということですね。
- 育児休業等開始日とから終了日の翌日が異なる月の場合
- 月の末日が育児休業期間中であれば免除
- 育児休業等開始日とから終了日の翌日が同一の月の場合
- 育児休業等取得日数が14日以上であれば免除
月末を含んでいなくても月に14日以上の取得日があれば免除されるようになりました。
実務上ではまず月末が育児休業期間かどうかを確認し、そうでなければ14日以上取得しているかを確認することになります。
では具体例をいくつかあげていきましょう。
例1)育児休業を5月1日~5月14日まで取得

まず月末は育児休業を取得していないため、次に14日以上育児休業を取得しているか確認します。
今回の場合は14日取得しているため5月分の社会保険料は免除されます。
例2)育児休業を5月31日だけ取得

育児休業終了日も5月31になるため終了日の翌日が6月1日になります。育児休業等開始日と終了日の翌日が異なる月のため、月末に取得しているかを確認することになります。5月の末日にあたる31日に育児休業を取得しているため1日だけの取得ですが5月分の社会保険料は免除されます。
例3)育児休業を5月31日~6月15日まで取得

5月末日の31日に育児休業を取得しているため、5月分の社会保険料は免除されます。
6月は14日以上の育児休業取得日がありますが、14日以上という要件は育児休業等開始日とから終了日の翌日が同一の月の場合になるため、適用されません。
そのため、6月分の社会保険料は免除されません。
例4)育児休業を5月10日~5月22日まで取得

まず月末にあたる5月31日を確認すると育児休業を取得していません。そして、育児休業等開始日とから終了日の翌日が同一の月にあたるため14日以上あれば免除になりますが、この例では13日しか取得していないため、5月分の社会保険料は免除されません。
例5)月末が休日にあたる場合

このパターンでは月末が土日で休日となるため、休日の前の日にあたる5月29日の1日だけ取得したら5月分の社会保険料は免除となります。ただし、企業が29日~31日まで育休ということで手続きをとる必要あるため注意してください。

この場合、育児休業期間は5/29~5/31で手続きしましょう。5/29の1日のみで手続きしてしまうと月末が含まれないため免除にならないので注意!
14日以上という要件が追加されたため、月額保険料は免除の幅が広がりましが月末1日だけ取得して社会保険料の免除を考えているという場合は休日の取り扱いに注意しましょう。
賞与保険料の免除要件

賞与保険料はさすがに月末1日だけの取得じゃダメだよね?

賞与保険料については免除の要件が厳しくなってしまいました。
免除要件は次のとおりです。
育児休業等期間が1ヵ月超の場合、月末が含まれる月に支給された賞与に関わる社会保険料を免除

ここでの注意点は賞与支払い月の月末が含まれているかというところですね。
また1ヵ月超のカウント方法も間違いのないように確認してみます。
- 育児休業等開始日の翌月の応当日の前日が1ヵ月の満了日となる。
- 育児休業等開始日が6月11日の場合、翌月の応当日は7月11日となるため、前日の7月10日が1ヵ月の満了日となる。
- 1ヵ月超を満たすためには育児休業を6月11日から少なくとも7月11日までとる必要がある。
- 育児休業等開始日の翌月の応当日がない場合、翌月末日が1ヵ月の満了日となる。
- 育児休業等開始日が5月31日の場合は、翌月の応当日がないため、6月30日が1ヵ月の満了日となる。
- 1ヵ月超を満たすためには育児休業を5月31日から少なくとも7月1日までとる必要がある。

う~ん、1ヵ月超の考え方が意外と難しいね。特に月末から育児休業を取得する場合は気を付けないといけないね。
では賞与保険料の免除要件についても具体例をあげて考えていきます。
例1)育児休業を6月1日~6月30日まで取得

賞与支給日が6月10日であり、賞与支給月にあたる6月末日(30日)まで育児休業を取得しているため一見免除されるように見えますが、1月超という要件を満たしていないため6月分に支払われた賞与に関する社会保険料は免除になりません。
例2)育児休業を6月1日~7月1日まで取得(賞与支給月の末日は育児休業期間に含まれる)

賞与支給日が6月10日であり、賞与支給月にあたる6月末日(30日)まで育児休業を取得しています。そして1月超という要件も満たしているため、6月分に支払われた賞与に関する社会保険料は免除されます。
例3)育児休業を6月1日~7月1日まで取得(賞与支給月の末日は育児休業期間に含まれない)

賞与支給日が7月1日のため、賞与支給月にあたる7月末日(31日)は育児休業等取得期間に含まれていません。そのため7月分に支払われた賞与に関する社会保険料は免除になりません。
例4)育児休業を5月31日~6月30日まで取得

上でも紹介していますが、育児休業等開始日が5月31日の場合、1ヵ月の満了日は翌月(6月)の末日、すなわち6月30日となります。育児休業期間が6月30日で終了する場合、これはちょうど1ヵ月であるため、1ヵ月超という要件を満たさず、6月分に支払われた賞与に関する社会保険料は免除になりません。免除となるには、少なくとも7月1日まで取得する必要があります。

1ヵ月超という点と賞与支給月の末日に育児休業を取得しているかという点がポイントだね。
例5)分割取得する場合

この例では1回目、2回目とも1ヵ月超という要件をみたしていないため、免除されないように見えますが、1回目と2回目の間はすべて「休日」と「有休」であり、労働日に該当しません。そのため、「休日」と「有休」を取得している日は育児休業等取得期間に含まれます。1回目と2回目、休日と有給の期間がすべて通算されることになるため5月分に支払われた賞与に関する社会保険料は免除されます。
おわりに
産後でも母子ともに健康状態に問題なければ比較的早く退院して育児は家庭でということが一般的ですので、体力が戻っていない母親に任せず、元気な父親が子育てをするという考えから男性版育休制度がはじまったのかなと思います。
問題はせっかくできた良い制度を企業側が利用できる体制を整えることができるかというところですね。人手不足の中小企業では働き盛りの男性社員は1日でも多く頑張ってほしいという考えも、当然理解できますので。
とはいえ従業員のワークライフバランスを考えるのも企業の務めであり、従業員の定着率にも影響しますので、企業としても男性版育休への取り組みはメリットがあるのではないでしょうか。
その中で社会保険料が免除になるという点は企業の負担も減るわけですので、従業員ともにメリットは大きいです。せっかくですので、制度を理解して間違えのないように利用したいですね。

